
これはダイナマイトポップスについての冷静な一考察である。ヒップホップや振り付き女性テクノミュージックが流行る21世紀のまっただなか、いったい今どき誰がクロスステップを一つひとつ踏みながら嬉々として「♪ゴー、バウンド」と歌い叫んでいるだろう。また、いったいどこのアンダーグラウンド空間で、一般人を巻き込み「YMCA」を踊り狂っているというのだろう。はたまた、いったいどこのバンドが、ちあきなおみとベイシティローラーズとハクション大魔王とジャニーズをカップリングして今もなお歌っているだろう。
言うまでもなく、絶対的大多数の日常生活において、そんな場面は皆無に等しい。「♪君たち女の子」と言われて、何十人ものリスナーが恥かしげもなく「♪ゴー、ゴー」と返していく…。これらは、最近の言葉に置き換えると「ありえねー」であり、関西人に言わせれば「なんでやねん」とツッコミたくなる摩訶不思議現象である。ところが、ダイポプライブにおいては、貴方も私も僕も君も、男も女も老いも若きも、それを変だと感じない魔力に獲り憑かれてしまう。その説明不可能な楽しさにより、ルルーシュ・ランペルージのギアスよりも簡単に自発的なトランス洗脳モードに陥ってしまう。
ダイポプメンバーが演じるライブショーは一見、おふざけにも見える。だが、やっているメンバーたちは身体をはって大真面目に取り組み、演じている。彼らはふざけてなどいない。これはまぎれもなく“本気の冗談”なのだから。
たいそうな手間隙をかけ、構想を練り、準備を重ね、丹念に仕込まれた“冗談”。だからこそ、客席の私たちも“疑似的中年アイドルスターによる本気の歌謡ショーごっこ”に心から加担せずにはいられなくなるのだ。演じるほうも観るほうも最高の冗談を味わうために大真面目に渋谷クロコダイルに集う。その日の僕たちに他のプライベート案件があろうとも、ダイポプライブに行かなければという絶対的優位は変わらない。それは彼らのステージ活動の中で、愛すべき昭和音楽、とりわけ70、80年代音楽へのリスペクトがこの上なく真摯なものであるからこそ生まれる結果である。
選び抜かれた質素な歌詞と、誰もが口ずさめる実直なメロディライン。そんな歌詞と曲の二つが融合し、魅力があふれていた、かつての歌謡曲たち。かつて誰もが共通に持ち得ていたそんな宝物にもう一度ふれるために、僕たちはダイポプに逢いに行く。“可笑しさ”という彼らなりのトッピングにより、現代に生きる僕たちの味覚に合わせて楽しくアレンジされた歌謡曲フルコース料理を楽しみに行くために。
…間違いなかろう。彼らほど歌謡曲を愛してやまない人たちを、僕は他に知らない。
今回のレポートは、6/28の第2ステージのうち、印象的であったクライマックスシーンを重点化して紹介する。いつものレポートの体裁ではないため、ライブ全体の流れをそのまま振り返って楽しみたかったと思われる人もいるかもしれない。そういう人はまたクロコダイルに足を運んでいただきたい。彼らは“絶対無比の偉大なるマンネリスト”として、時代の流れを無視したカッコ良さをベースに、毎回、サービス精神満載のエンターテイメントでもってそこで待ってくれているのだから。
◇第2ステージ演奏曲セットリスト:
『男の子女の子』『モニカ』『渚のはいから人魚』『夏の扉』『与作はチャンピオン』『やまびこ1号』『新・オバケのQ太郎』『ハクション大魔王』『夜へ急ぐ人』『ガンダーラ』『モンキーマジック』[総立ちシステムコーナー]『涙のリクエスト』『シーサウイド・バウンド』『キッスは目にして』『パラダイス銀河』『ヤングマン』[アンコール]『Saturday Night』『君の瞳に恋してる』『銀河鉄道999』『また逢う日まで』
◇第2ステージの見どころ(隊長のツボだった第4位から第1位を紹介)
◆第4位:夏の特別ご奉仕品、えす様メドレー
えす様が歌姫ズとのコンビで歌う『渚のはいから人魚』は、回を重ねるごとに、シンジの制御が不能となったエヴァのような暴走ぶりがエスカレート。客席の男性軍を一瞬にしてメロメロにしてしまう「ねぇダーリン♪攻撃」をひっさげ、パワー豊かに歌い込むほどセクシー歌唱度をアップしていくえす様と、ボーカルを追い越す勢いの激流コーラスで、ひたすら前へ突っ走る歌姫ズ。この3人のエナジーがバトルしあうこのセッション、…楽しいったらありゃしない。
脳裏にへばりつくような「♪ズッキンドッキン、ズッキンドキン」の強烈なコーラス攻撃も冷めやらぬ中、続いては夏らしさがさらに加速する『夏の扉』へ。客席をヒートアップさせるえす様のパフォーマンスに、歌姫ズによる松田聖子の振り付け再現も見た目麗しく、客席からの応援コールが熱くなっていくのは……これはもう自然の摂理。
◆第3位:ピロピロ飲み&「俺を殺す気か」事件
OK☆さん「次はR40アニメメドレーです」、客席「わかんなーい」、ポッキーさん「いいんだよっ!(笑)……じゃ、これ知ってる?……(なぜか突然、懐かしきピロピロ飲みのしぐさを始めるポッキーさん)……」、客席「知らなーい」、ポッキーさん「(ヤケ気味に)バっカじゃないの!」。…で、場内、大爆笑。
また、『新・オバケのQ太郎』を気持ちよく歌い続けるポッキーさんを尻目に、曲の3番の途中で突然、バックバンドが無演奏状態に。ポッキーさん「これって、そういうイジメ?そうなんだ、俺がリハーサルに出てない間に…。これ、ドッキリ?」(笑)。
そして『ハクション大魔王』も歌い終わったポッキーさんいわく「新オバケのQ太郎とハクション大魔王を続けて歌わせるなんて……殺す気かっ!」。確かに、男性離れした高音発声と、すさまじい肺活量を必要とする過酷メドレーなのでした(爆)。
◆第2位:オリジナルソング歌詞ド忘れ事件
『やまびこ1号』のファーストパートをポッキーさんが情感たっぷりに歌い始め、いよいよセカンドパートのOK☆さんへバトンタッチ。……と、タイミングよく歌い出さなかったOK☆さんがポツリと…「…歌詞、忘れちゃった…」。数少ないオリジナルソングにあり得ないミステイクを目の当たりにして大笑いの客席からは、愛情あふれる「バカじゃないのーっ!(笑)」の声援も。これに対してポッキーさんが客席に向かっていち早く呼応。「バカだよっ!」…そしてまたまた場内みんなで大笑い。
その後、曲はめでたく「♪きっと遠く離れてても…」から再スタートし、この日の客は、期せずして『やまびこ1号・編集バージョン』誕生の歴史的瞬間に立ち会えたのでした。それにしても、OK☆さんが再び歌い始めるまでのヨハネさんの、100%即興でのつなぎのキーボードメロディ運び、素晴らしかったです。プロの実力の凄さを実感した瞬間でした。
◆第1位:夏の夜の、ゾッとする歌謡曲事件
この日の第2部の強烈インパクトナンバーワン・パフォーマンスは、ちあきなおみの『夜へ急ぐ人』。1977年のNHK紅白歌合戦での、本人みずから髪を振り乱しながらの「おいでおいで」パフォーマンスは未だにカルト的な名場面として歌謡界に語り継がれているが、これをヨハネパウロさんなりにさらにおもしろ可笑しくダイポプ風にアレンジ。黒装束に、長い黒髪を振り乱し、髑髏のオブジェ付きの長い鎌を振り回してステージを右へ左へと徘徊して熱唱しまくるヨハネパウロさん。背の高い、威圧感のある女装男が客席に向かって「♪おいで、おいで」と長鎌で手招きしているあのおぞましき怪演ぶりは今も脳裏に…。あぁ、思い出すと今夜も眠れない…(笑)。
weitten by T.Seno (Dynamitepops Official Reporter)
photo by Minako.Y (Dynamitepops Official Phtographer)